みなみ三線店 沖縄本島産黒木 枝川勝作与那城型三線

約30ヶ月という長い月日を経て、ついに自身初のオーダーメイド三線が完成しました。みなみ三線店の枝川勝さんに作成してもらった、沖縄本島産黒木を使った与那城型三線です。

 

きっかけは、確かみなみ三線店のこのブログでした。元々銘苅先生の三線でお世話になっていたのでちょくちょくご連絡しつつ購入したりしていたのですが、沖縄本島産黒木があるとの情報を見てから気になってしょうがなくなり、実際に訪問して拝見させてもらいました。

 

本島産黒木といってもさすがに原木部分の黒みは少なく、黒みが多い原木はすでに売れたあとだったのですが、どうしても希少な木材で三線を作ってほしいという欲求に勝てず、その場で枝川さんにお願いしました。

 

すでに当時から民謡ではなく古典にシフトしていたので、型は定番の与那城型を選択。少し太めに作ってくださいとお願いした記憶があります。オーダーメイドなので、どうしても納得のいく一本が欲しい。この30ヶ月はとにかくワクワクがずっと続いた2年半でした。


三線は棹の形状、型、木の種類も大事なのですが、最も音色に影響が出るのは胴です。胴の形状と皮の種類と張りの強さ。今回、与那城に採用してもらったのは桃原製の二色盛島開鐘大音通という特殊チーガー。これは、チャーギと呼ばれる木材で作られる胴に、クヮーギという別の種類の木材を掛け合わせた二つの木材を使用した胴です。

 

故桃原栄仁氏が研究の末に作られたようですが、チャーギの胴よりも若干重くなってしまうがゆえに、あまり広まらなかったようです。私は古典を主としておりますので、正座して弾くのが通常スタイルです。よって、胴が重くても全く問題ないので、見た目もクールなこの胴を使いました。希少な数限りある胴なので、+¥20,000しました。

 

いままでは5~6番皮を7.5分張りでお願いしていたのですが、一つ前にお願いした銘苅春政作の大真壁の際に1番皮で強めに張ってもらい、その音にハマってきたので、今回も同様に一番皮で強めに張ってもらいました。その音がこちら。


まだ皮を張ってから時間がさほど経過していないので、音の立ち上がりが少し遅い感じがしますが、これから時間と共に皮が馴染んでいくとかなりの音になる予感です。

 

実際に大真壁の際も、手にしてから1~2ヶ月ぐらいしたら急に鳴り始めた記憶があります。皮は張ってから馴染むまでにそれなりに弾きこまないといけないんですね。

 

さらにこの盛島胴は余韻が独特と言われているので、弾いたあとの余韻がどのように変化していくのがすごく楽しみです。


そしてカラクイは、おなじみ渡慶次三線工房の象牙の首里ムディ。

 

個人的にはカンプーが好き(優しい感じがして)なんですが、今回は枝川さんのおすすめもあって首里ムディにしました。確かに首里ムディが一番調弦の際に回しやすいかもしれません。

 

あ、カンプーとか首里ムディとかはカラクイの頭についている形の名称です。興味のある方はぜひ調べてみてください。

 

最近では象牙じゃなくても一見わからないぐらい他の素材もきれいなのですが、せっかくのオーダーメイド三線ですが、ここはケチらずに象牙で行こうと決めていました。

 

完成した三線についている姿を見て、やはりよかったと確信してます。


そして三線のスタイルを決める大きな要素、ティーガーは最終的に久米島紬のこげ茶革閉じにしました。これはみなみ三線店のオリジナルティーガーです。

 

元々手元にあった特注の紅型ティーガーなどを考えていたのですが、散々迷ったすえにこのティーガーでお願いしました。数あるティーガーのなかで、これこそが一番美しいと思っています。

 

また、糸掛は和胡弓で使用されている音緒を代用しました。私はいつも浅草にある菊岡中むらで音緒を購入してます。

 

三線に音緒を装着する人が以前より増えてきた気がしますが、おすすめです。私は師匠の影響で音緒をつけるようになりました。


そして塗りは、濃いめのスンチーです。白太の部分を赤黒く(かなり黒に近い感じの濃いめの赤色)してもらいました。昔の三線の塗りはこのような感じだったそうです。

 

私は古典の野村流なので、古典音楽をする上で派手な赤色や黄色の三線はご法度です。ただ、黒塗りも少し芸がないので、このようにスンチーで赤黒くしてもらうと、木の元々の木目もわかりますし、パッと見は黒に見えますし、おすすめです。

 

また、ほぼ100%お願いしてますがつや消しにしています。どうもつや消しじゃないと触り心地があまり好きじゃないんですよね。手汗をかいた時にベタベタしすぎる感があるので、私はつや消しが好みです。


さて、長々と書いてまいりましたが、途中途中で製作過程をブログで拝見していたこともあり、30ヶ月という長い道のりを不満に思うことはありませんでした。そして、これだけ長い間待つと、当然期待もどんどん上昇していくわけですが、結果的に想像をはるかに上回る美しさ、弾きやすさ、音色に大大大満足しております。文句なしの五つ星です。

 

世の中に、銘苅先生のように名が轟く職人さんは何名かいらっしゃいますが、この与那城に関しては師匠を超えたんじゃないか?と思うほどの美しさです。実際に素人の知人に何本かの三線を並べてどれが一番美しいかと聞くと、皆この一本を指します。それだけ群を抜いて優美です。

 

今後はこの三線がメインの一本になると思いますが、以下、写真を掲載します。塗り前の写真もありますので、比較すると面白いです。