三線 本漆塗りと人工漆と塗りなしのメリットデメリット

銘苅春政作 本漆 知念真壁型三線
銘苅春政作 本漆 知念真壁型三線
銘苅春政作 人工漆 与那城三線
銘苅春政作 人工漆 与那城三線
又吉真栄作 塗りなし 真壁型三線
又吉真栄作 塗りなし 真壁型三線

意図したわけではないですが、結果的に本漆塗りの三線、人工漆の三線、塗りなしの三線を所有することになったので、その一長一短を個人的見解から書きます。

私は三線職人でも塗り職人でもありませんので、あくまで個人的見解になりますので悪しからず。

 

まず様々なメリットデメリットを踏まえて、個人的な好みの順番で並べると

 

一位 本漆

 

二位 塗りなし

 

三位 人工漆

 

の順番になります。1つ1つメリットデメリットを書いていきます。

 


まず、前提を書かなければなりません。そもそも、三線の塗りを考えるうえで人工漆以外の選択肢はあるの?という現状があります。世の中に出ている9割ぐらいがほぼ人工漆で塗られているし、塗りなしで使える黒木など、昨今では滅多に見かけません。

 

そして、本漆塗りをお願いできる人はとても少ないです。ホームページを開設して、本漆塗り承ります、みたいな人は現状で一人もいないはず。全国各地に漆塗りはありますから、漆塗り職人に頼めば良いのではないかと考えがちですが、三線(楽器)の漆塗りとは器のそれとは大きく異なります。実際に私もみたことがありますが、三線を塗ったことのない漆職人に本漆塗りを頼むと、三線の角がきれいに丸くなり、ボテっとなります。例えていえば、冬の着膨れしたような状況になり、美しい三線がいきなり太ったような感じになってしまうのです。よって、三線を塗り慣れていない人にお願いするのはとても危険です。

 

以前、●●塗り(某有名他県漆塗り)の三線何百万円で売ってる方がいましたが、三線職人さんが嘆いていました。せっかくの美しい三線が台無しだ、と。分厚く漆をぬる関係で、原型がわからないほど丸々としてました。

 

 

私はたまたま運良く県立博物館に飾る三線の塗りを担当されている塗り師の方をご紹介いただき、塗りをお願いできたのでとてもきれいに仕上がっていますが、中には素人目でみても荒いなって方もいらっしゃいます。

なかなか正面玄関で訪ねて行って塗りをお願いしても難しいケースもあるようですので、そもそも三線の本漆塗りをお願いできるのか?という問題があるのですが、ご存知の通り三線は国の伝統工芸品として認定されました。

 

この伝統工芸品の認定を継続するには、三線の本漆を継承していかないとならないようで、そう考えると今後本漆塗りの職人さんは徐々に(今よりは)増えてくるかもしれません。そのあたりを踏まえて書いていきます。

 

本漆塗り

まず、本漆塗りの最大の特徴は、"硬化したらガラスと同じぐらい硬い"こと、だと思います。のちに列記しますが、しっかりと硬化した本漆塗りは弦の跡がつきません。

 

人工漆の場合、数十回ほど弾くと、薄っすらと弦跡がついてしまいますが、それがありません。

 

また、見た目の美しさはやはりとてつもなく美しいと感じます。これは人工漆も十分にきれいで美しいのですが、質の違う美しさといいますか、気品のある美しさを感じます。

 

一方で、デメリットが大きく2つあります。

そもそもとても高額です。誰と誰を比較するかにもよりますが、本漆塗りは人工漆の3~5倍、人によってはそれ以上の値段がかかります。

 

さらに、硬化(乾いて固まるまで)の時間が最低半年、実際には塗りに出してからだいたい約1年弱ほどは時間を要します。

三線ができた!と思っても塗りに出してから一年待つのはそれなりに忍耐が必要です。硬化しきらずに弾いてしまうと、塗りムラのような状態になるため、ひたすら待ち続けなければなりません。

 

以下、メリットデメリットの記載です。

 

メリット

とにかく美しい高級感。肌触りがとても良い(ベタつく感じが少ない)。弦跡がつかない。精神的に高揚する。

 

デメリット

高額(3~10万円の間ぐらい?)。塗り終わってから硬化に約半年ぐらい時間がかかる。


人工漆

昨今の三線はほぼすべてと言っても過言ではないほど、人工漆です。人工漆と書いてますが、漆ではありません。カシューや木工ウレタン、ポリサイトなどを総称して人工漆と呼ばれています。

 

最大の特徴は、安くて早くてきれい。普通に本漆を知らないで続けていれば、特に不満はないと思われます。

また、つや消しの加工も比較的安価で簡単に行えるため、マットで落ち着いた感じも実現できます。

 

ただし、写真にある通り、ある程度弾くと弦の跡がつきます。

本漆に比べて多少硬化は柔らかいということでしょうか。

 

私は個人的に本漆が大本命ではありますが、よほどのことがない限り人工漆で全く問題なく、棹の保護という本来の目的も完全に満たしています。

 

メリット

安価(1万円~2万円ほど)。だいたい1~2ヶ月以内で乾燥/硬化するため、すぐに使える。見た目もきれい。つや消しも可能。

 

デメリット

弦跡がつく。本漆と比べると、やや見劣りするか。


塗りなし

塗りなしは、本漆よりも本数が少ないと思われます。最大の特徴は、木そのもののすべすべ感が味わえることです。

 

夏場に三線をやっていて手に汗をかいているとベタついて、中位への移動がスムーズにいかない人もいるかもしれませんが、そのベタつきが全くなく、すべすべなのが塗りなし。

 

ただし、これはものすごく良質な黒木じゃないと塗りなしの状態は危険です。経年的にひび割れの恐れがあります。

 

写真掲載のような稀にみる上等な黒木のみが、塗りなしが可能です。

 

メリット

肌触りが最高。木そのものを感じられるのが素晴らしい。

 

デメリット

木が良質じゃないと、ひび割れの危険性あり。また、ぶつけて傷をつけてしまうことも。