三線の黒木不足がいよいよ深刻になってきました。
誤解を恐れずに言えば、あるところには黒木はまだ存在しているのですが、情報を知らないとその三線屋にたどり着けないといったほうが正しいかもしれません。
三線屋さんによって、保有数に差が出てきていて、ないところは数十本というレベル(あと数年持つか?)という数になってきています。
改めて、世の中の三線で出回っている希少度合いで上から並べると
沖縄本島産黒木(島クルチ)
八重山黒木(エーマ)
カミゲン黒木、フィリピン黒木、ユシ木
縞黒檀、カマゴン
などがあります。少し前まではカミゲン黒木もそこそこあったのですが、最近はひび割れしていないカミゲンを見ることも随分希になってきました。
そして黒木ではないですが、ユシ木(特に実入り)も希少性が増していて、ものによっては黒木を上回る価格帯で取引されています。
なので見つけたら迷わずに即購入!が理想ではあるんですが、実際に三線屋さんがよく言う「悪い八重山よりも良いカミゲンのほうがいい」と言われるように、特に八重山黒木は一種の宗教化じゃないですが、八重山だったらなんでも良いから高値で売り買いするみたいな風潮があるのも事実。実態に良い木かどうかは別として、八重山信仰みたいなものが現在は蔓延っています。
少し前に沖縄本島産の黒木で与那城を作ってから沖縄本島産黒木(通称島クルチ)にぞっこんな私ですが、そもそも島クルチは希少でほぼ手に入らないのと、良い原木もなくなってきました。ので、今一番注目しているのがこの二つです。
みなみ三線店が独自にネーミングした模様がきれいなカミゲン黒木、天川杢です。あまかーとは言いえて妙で、スンチー塗りをした際にシラタ部分がきれいな色になり、まるで天の川のように見える、という意味だそうです。古典ではなかなか難しいかもしれませんが、民謡だったら全然問題ありません。
元来、ギターなんかは虎目のレスポールなど杢目の鮮やかなギターは高額で取引されていますが、三線も虎杢と呼ばれる木はあるものの、一般的には黒が良いとされてきました。でも、若い唄者の方などは杢目がきれいな三線を使われているケースが増えてきたので、今後はこっちが主流になっていくのかなって思います。どう考えてもこっちがきれいですしね。
開鐘のなかでも音が良いと言われた富盛開鐘に使われているのがユシ木です。ユシ木のなかでも、実入りといわれる芯の部分を使ったユシ木の実入りは材質が硬くしなやかで、音が響くと言われています。黒木と違って柔らかな音色だと言われることも多く、民謡の方が多く利用しているイメージです。
昔のユシ木三線などは、黒塗りと言って黒く塗られているものも多く見かけます。最近はスンチーという透明の塗りを施して、赤茶っぽい色をした三線も増えています。
今までは山原産のユシ木が有名でしたが、最近は石垣島に自生する八重山ユシ木が注目されはじめています。芯の部分が黒いものと赤いものがあり、特に黒いもののほうが音が良いと言われ、黒ユシ木と呼ばれています。八重山三線工房にある黒ユシ木を先日少し弾かせてもらいましたが、柔らかく響くとはこのことか!と少し感動しました。沖縄本島の有名な三線職人さんも、この原木をねだりにくるそうです。それぐらい良い木なんですね。
まだ原木は大量にあるものの、良いユシ木を探している方は早めのほうが良いのかも。そして、八重山にある三線工房ならではですが、八重山黒木も数本あります。
現在、私が銘苅春政先生に製作を依頼しているカミゲン黒木の棹です。ご覧の通り真っ黒ではなく、シラタが随所に混ざっています。しかしながら、ここまで割れのない原木を最近見かけることは少なくなりました。
銘苅先生のところに置いてあった原木のなかで割れていないものはこれだけで、あとの原木はそこらじゅうにヒビが入っていたのを接着されていました。
ヒビが入っているイコールNGではないですし、黒木は特にヒビが入りやすいのですが、どうしても接着剤の劣化などで接着面が分離してしまうことがあるようです。密度が高く、割れていない木の音の伝導とひび割れ材を想像すると、やはり音の面ではひび割れが少ないほうが良いと思います。
また、以前は真っ黒の黒木イコール最高、シラタが入ってるのは値が下がる(今もその考えが根強い)と言われていましたが、いくつかの三線屋さんを回っていると、最近はシラタが入っているほうが見た目も良いし、音も良いという話を聞きます。
私もシラタのほうが多い棹を保有してますが、音が極端に響かないとは感じたことがありません。むしろ、胴とのバランスで決まっている部分も多いと思いますし、真っ黒な棹でも響かないものもあるとのこと。
色よりもヒビ割れ。これを原木選びの時は重要視したほうがいいかもしれませんね。