完成品 vs セミオーダー vs フルオーダー

銘苅春政氏作の三線
完成品の三線
著名製作者の場合、棹だけ販売されていることも
著名製作者の場合、棹だけ販売されていることも

三線はみなさんどのような方法で購入されているのでしょうか?

 

最初の一本目だから安いものを、と考えがちですが、必ずしも私はそれがいいと思えません。長く続けるにはより良いものを購入したほうが結果として長続きすると感じています。

単純に高いもののほうが作りが良いからです。

 

余談ですが、あくまで私の周囲の傾向なのですが、ギターとか過去に楽器を演奏されている人は払えるかどうかは別として、楽器に20万円以上支払うことに抵抗がない方が多く、はじめての楽器 = 三線の方は上限10万円が一つのボーダーに感じます。なかなか10万円以上は払わない。下手すると3万円も払わない。私の個人的見解ですが、楽器に投資しない人は結果として長続きしてない人が多いかも。

 

三線の購入には大きく分けて3パターン存在します。

  1. 完成品を買う
  2. セミオーダーで購入する
  3. フルオーダーメイドで購入する

最初の完成品とは文字通り、完成された三線を購入するケース。それなりの値段で高品質な完成品を探すなら沖縄三線製作事業共同組合でしょう。ネットショップも実店舗もあるので、行ける人は実際に行ってみましょう。

 

沖縄までいくのが難しい方は、東京のわしたショップに十挺前後沖縄三線製作事業共同組合の三線が置いてあります。完成品の最大のメリットは、弾くことができること。また、見た目を直に確認できる点です。デメリットとしては、見た目は好きだけど音色が好きじゃないとか、音はこっちが良いけど見た目はあっちのほうが良い、などの状況が起こりやすいのが難点です。

 

私の個人的な話ですが、おそらくもう完成品を買うことはないと思います。それぐらい、自分の好みにすべてフィットしたものはなかなか存在しません。完成品を買ったとしたら、細かいところを時間かけて変更していくと思います。棹以外は完成品でもお金を払えば変更できます。

 

2のセミオーダーは最後に記述するとして、三線をフルオーダーされる方は結構いらっしゃいます。二挺目でフルオーダーというパターンが多いですが、一挺目からフルオーダーの人もそれなりにいるようです。特に最近は、もう状態の良い黒木の原木がいよいよ手に入らなくなっており、将来オーダーメイドを、と考えてる人は早くしないと黒木で作れなくなるかもしれません。結構早いタイミングで。

 

フルオーダーの利点は、自分の予算に合わせて木の材質から話し合いながら理想の三線が作れることではないでしょうか。理想の三線のイメージが明確な方は迷わずフルオーダーにいくべきでしょう。見た目と音色、弾き心地、さらに型。この4つがクリアで且つ時間がかかっても満足いくものを手に入れたい方におすすめです。

 

例えば、黒木を使って細身の真壁型で、民謡向けに柔らかい音で20万円以内に収めたい、とか。

 

さらに、製作後もその三線工房と付き合うことになり、メンテナンスも含めて安心です。デメリットは製作期間が長いことです。大抵の場合、1年〜1年半ぐらいの歳月をかけて作られることが多いようです。余談ですが、私は数年後の仕上げの予定で、みなみ三線店さんにフルオーダーの予約をしています。原木は沖縄本島産黒木を指定済みです。


オススメはセミオーダーでプチカスタマイズ


カミゲン黒木 江戸ユナー型 黄色系の漆塗り
四挺目の三線 カミゲン黒木 江戸ユナー型 黄色系の漆塗り
みなみ三線店でセミオーダー 棹は銘苅春政作 江戸ユナー
チーガー(盛嶋開鐘チーガー)、ティーガーを指定のものに変更

そして最後にセミオーダーについて。便宜上セミオーダーと書きましたが、セミオーダーという名前で販売している工房はあまり見かけません。これは、棹だけ販売している状況で、その後の工程に注文がつけられるケースのことを指します。どこまで注文がつけられるかは三線工房によって違いますし、棹だけ販売されている状態でもその後の工程に一切注文できないケースもありますので確認が必要ですが、私はこのセミオーダーが一番オススメな方法です。

 

私の二挺目と四挺目の三線はセミオーダーでした。二挺目は塗り無しの棹で購入。四挺目は塗り有りの状態でした。残念ながら二挺目は塗りも張りも指定できませんでしたが、カラクイやティーガーは好みのものを指定できました。

 

一番セミオーダーの良さを実感したのが四挺目の三線です。

もともと四挺目の江戸与那城に出会う前に、私は屋良三線屋の八重山クルチの三線のように木の原色に近い色の三線を探していました。知識もあまりなかったので、この色が出るのは木の素材が影響してるのか、塗りが影響しているのかがわからないまま八重山黒木の三線をWebで眺める毎日。こんな派手な色の三線が欲しい。以前、宮古木工芸さんが物産展で展示していた八重山黒木もこの色だったため、やはりこれは八重山黒木だからこの色なんだろうか?などと思っていました。

 

そんな時にみなみ三線店に伺って目にしたのがこの写真の三線でした。しかも銘苅春政先生作の江戸与那城型。

八重山黒木ではなく、カミゲン黒木です。何のことはない、この色は白太の色が真っ白に近い黒木に黄色系の漆で塗るとこの色になるとのこと。まさに求めていた色合いでした。

 

ただ、こういう色合いにするには塗りも微妙な加減が必要でしょうし、そもそも白太が真っ白に近くないといけないそうなので、カマゴンとかで黄色っぽい白太だと出ないのかも?

 

また、赤やオレンジ系統の塗りをしている三線はたまに見かけますが、こういう黄色の塗りはあまり見かけません。そもそもが真っ黒=上等という世界ですので、こういう派手な色で黒から最も遠いところにある三線はあまり需要がないのかもしれないですね。

 

この見た目が派手な江戸ユナーをできるだけ残りのパーツを派手な組み合わせにし、音は最も自分が好きな音にしたいという欲求がフツフツと沸いてきた私は、みなみ三線店の枝川さんにいろいろと無理をお願いしてみました。

 

とはいえ、棹が派手なのはティーガーはシックな黒ベース、だけど龍で少し派手に。


みなみ三線店より 盛嶋開鐘チーガー
みなみ三線店より 盛嶋開鐘チーガー

チーガーの種類が音に与える影響は全く科学的に証明されていないようですが、見た目も派手な盛嶋開鐘チーガーを選択。一番大事な音色は、みなみ三線店のYoutubeを穴があくほど研究し、自分が最も好きな音に近い張り具合(薄手の皮で7分5厘)を指定しつつ、そのなかでも最も好みに近い音のURLを4つほど抽出してお渡ししました。


その際にも音について丁寧にアドバイスをいただき、枝川さんには感謝しきりです。


みなみ三線店より 指定したティーガー
みなみ三線店より 指定したティーガー

ここまで書いたらお判りかと思いますが、セミオーダーの最大のメリットは好きな棹を選定した上で、好きな塗りを指定して好きな色にし、好きな音色で組み上げられ、さらにフルオーダーよりずっと短い期間で仕上がることです。塗りが終わっている状況であれば、その工房が忙しくなければ1ヶ月以内に手にすることができるはずです。塗りが時間がかかるため、塗り無しの場合は3〜6ヶ月以上(人工漆か本漆かでも違う)要することもあります。

 

反対にデメリットは、なかなか欲しい作者が欲しい材質で欲しい型の欲しい見た目の棹を作っているケースに遭遇しないことかもしれません。フルオーダーで人気の製作者の方は特に棹だけを一般販売用で用意する時間がないため、結果的に完全フルオーダーだけになったりします。

 

セミオーダーする時には、できるだけ販売専門店じゃなくて職人さんの工房で購入すると後々安心です。


二挺目以降は絶対にこだわりたい音色と弾き心地

みなみ三線店さんのYoutubeを見ると、張りと音の関係が理解しやすい。この動画は7分張りの音。かなり柔らかく低音気味の音に聞こえる。

薄い皮を7分5厘で張った三線の音

同じ7分5厘でも音が異なる。一つとして同じはない

 

8分5厘の音。7分5厘に比べて固く、高音に聞こえる

三線販売店に足しげく通い、いろんな三線を試奏するとつくづく感じるのが、三線選びは音質というより、音色(音の好み)と弾き心地なんだなって思います。ここで言う音質とは、音の余韻です。

 

が、そもそもこれは三線をかなり弾いていかないとよくわかりません....たぶん。またはいずれかの楽器経験者ならわかるかも。なのでまずは弾き熟せるまではあまり気にしなくても良いかもしれません。

 

「これいい音するよね!」と言われたらそんな気もするし、音悪いね〜と言われたらそんな気も...なんて人のほうが多いかもしれませんね。

 

そこで、個人的に判断に大事なのは音色だと思ってます。

胴をギリギリまで張った固い音、柔らかい音、こもった感じの音、明るい音、キンキンする音など、三線はそれぞれ音色、音像が違います。一般的に、古典を弾く方は胴をきつく張って固い音が良い音とされているようです。

 

別の言葉で表現すると、音の線が細くて高音が好きな場合は硬く張った胴を、太い音で丸みを帯びた音が好きな場合は弱い張りを、という感じです。これは実際に三線屋さんをYoutubeで見てみると、8分張りとか7分5厘張り、7分張りなど、張りの強さを記載された上で演奏してたりしますので、聞き比べてみるといいです。

素人でも一発で音の違いがわかると思います。数字が多いほうが張りが強いので硬い音で高音になります。

 

昔は「張った皮が家に帰るまで持てばいい」(銘苅先生談)というぐらい張ることを良しとされてたとのこと。要するに、張りすぎることで蛇皮が簡単に破れちゃうってことです。

 

反対に民謡を弾かれる方は柔らかい音を好むため、胴の張りを柔らかくする人が多いようです。どっちがいい悪いという話もあるようですが、音は好みですのでどっちが好きかという話ですね。

 

その昔、とある著名製作者の方の真壁をお店で試奏した際に、ん?って感じるぐらいフィットしませんでした。なんかあんまり良い音じゃないなって思ったんですが、いま思うとただ張りをかなり弱くしてただけなのかもしれません。ベロンベロンに近い音でした。

 


型によって形状、太さが異なる
型によって形状、太さが異なる

そして、棹の握りは型と製作者の違いで大きく異なります。私は与那城型と真壁 x 2を持っていますが、当然それぞれ握りが全く違います。与那城型を弾いた後にすぐ真壁を持つと、2分の1ぐらいの細さに感じます。元々真壁の棹の細さがどうもしっくりこないなって思い与那城型(棹太め)にし、これこれ!という感じでフィットした経緯があるので、いまでは与那城型が一番弾きやすく感じてます。


でも、別の製作者の方が作られた与那城型だとまた微妙に感覚が異なるんですよね。これこそ弾いてみないとわからないんですが....。

 

さて、ここまで書いてきましたが、楽器には好きな音、好きな握り心地というものがあります。三線の場合、古典をやるのか、民謡やるのか、ポップをやるのかでも異なります。自分の声質に合うか合わないかも大事な要素です。一本目は値段で選ぶとして、慣れてきたら是非好みを追求してみてください。